Journal of Ancient Egyptian Interconnections (JAEI),
Vol. 1, No. 1 (January 2009)
iv, 46 p.
http://www.uair.arizona.edu/holdings/journal?r=uadc://azu_egypt/
電子媒体を用いたエジプト学の雑誌というのはすでにいくつかありますが、ここでは古代エジプトと近隣諸国との間の相互の接触や影響について考える雑誌ということになります。先輩格の似たような雑誌としてAegypten und Levanteが説明文に挙げられており、これはウィーンにいるマンフレッド・ビータックが編集している雑誌。エジプトと東地中海沿岸、もしくはエーゲとの関わりを論じる専門誌です。
ここではアリゾナ大学にいるリチャード・H. ウィルキンソンが編集者で、和訳されている本が何冊もあるので日本人にも知られている存在。編集委員会としてビータックの他にサリマ・イクラム、ナンノ・マリナトス、デヴィッド・オコーナー、ドナルド・レッドフォード、トーマス・シュナイダー、ウィレミナ・ウェンドリッヒ、ニコラス・ワイアットらの名が挙げられています。なかなか豪華な布陣ということができると思います。
実はここ数年でエジプト学に関連する新たな雑誌がいくつも立ち上げられていて、とうていその全部に目を通すことが困難な状況を招いています。
トーマス・シュナイダーもJournal of Egyptian Historyという新しい雑誌の編集者。発行はレイデンの老舗出版社であるブリルで、2008年の創刊です。
Journal of Egyptian History (JEH) (2008-)
https://www.eisenbrauns.com/ECOM/_2JY0VKH3Z.HTM
JAEIというこの雑誌は、ですから権威ある他雑誌の編集主幹を複数、編集委員として招待している珍しいものとみなすことができ、周到な準備のもとに発行されたことが推察される刊行物。"Executive Production Board"としてKMTのデニス・フォーブス、またEESの機関誌であるEgyptian Archaeologyのパトリシア・スペンサーの名前もうかがわれるのが興味深く思われます。穿った見方をするならば、権威づけに急いでいる印象も感じられないことはない。
Nanno Marinatos,
"The Indebtedness of Minoan Religion to Egyptian Solar Religion: Was Sir Arthur Evans Right?," pp. 22-28.
Nicholas Wyatt,
"Grasping the Griffin: Identifying and Characterizing the Griffin in Egyptian and West Semitic Tradition," pp. 29-39.
が連続して掲載されています。ふたつとも編集委員自身による論考。雑誌が造られる場合には第1号に重鎮から原稿を投稿してもらうことは重要で、ここでは2人によってそれがなされています。内容も相互で関わっており、
"The implications of this ornament have been discussed by Richard H. Wilkinson and are explored in the present issue of this journal by Nanno Marinatos." (p. 34)
と、お友達感覚が若干、気になるところ。しかしこの2本の論文は面白く、並行して読まれるべきです。聖書にも登場する想像上の動物「グリフィン(グリフォン)」が扱われます。
年に4回発行という頻度はかなり忙しいはずで、今後の展開が注目されます。
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