2009年1月19日月曜日

Dumarcay et Courbin 1988


フランス極東学院(EFEO)による刊行物で、これまで未発表であった図面を多数掲載している点は貴重。カンボジアのクメール建築遺構研究においては重要な本です。

Jacques Dumarcay,
Documents graphiques de la Conservation d'Angkor 1963-1973.

Paul Courbin,
La fouille du Sras-Srang.

Memoires archeologiques 18
(Ecole Francaise d'Extreme-Orient (EFEO), Paris, 1988)
59 p., 89 pls.

B. P. グロリエに捧げられた本です。
この学者はクメール学に多大な貢献を果たした大物。1986年に亡くなりましたが、1960年から1975年まで、アンコール地域の保存修復家として活躍しました。

しかしどこかがおかしな出版物で、一冊の本の中に、無理矢理ふたつの内容を詰め込んだ印象が拭えません。表紙ではデュマルセが纏めた図面資料に関する題を先に置き、スラ・スランの発掘報告が後になりますが、実際はその逆です。
序文をデュマルセが記し、十数枚の写真と図面を付しながら二つの内容の統一を図る書き方をしていますけれども、本の構成は半ば混乱をきたしているとしか思われない。むしろ89枚の図面を出版することのみが主目的であったのではと疑われる書籍です。

折り込みを利用して、大きな図面も掲載しようと試みています。例えばタ・ソムの平面図は3ページ分の幅を持ちます。
アンコールのプレア・カンの平面図に至っては、何と4ページ分の幅の紙に印刷されていますが、これを長軸に沿って南北に切り分けています。
常識から考えて、普通はまずやらないだろうなと思わせるのは、信じられないことにこの細長く切られた平面図を一枚の長い紙面の表裏の両面に刷るという荒技をやっていて、見にくいこと、この上ない。

"Collection de textes et documents sur l'Indochine XVII"と表紙には印刷されていますが、このシリーズの17番目については、実は別に"Nouvelles inscriptions du Cambodge"として1989年に刊行されており、EFEOのサイトでも確認することができます。
それ故、本当のシリーズ名は"Memoires archeologiques 18"であるらしい。EFEOのサイトではそうなっています。
どのような理由で間違ったのか、良く分かりません。

コンポン・スヴァイのプレア・カンの中心部の平面図が掲載されています。これを見るためだけでも入手する価値があります。

0 件のコメント:

コメントを投稿