2009年1月29日木曜日

Simpson 1963-1986


中王国時代に属するパピルス(pReisner)の読解。全4巻からなり、建造計画が記されている部分もあるため、注目される資料です。序文にもありますが、似たような記述は新王国時代にはいくつかあっても、それより前の時代ではきわめて稀となります。

第4巻が出版されたのは、第1巻が出てから23年後で、非常に長い時間がかかっていますが、これでも出版計画を大幅に縮めた結果で、第2巻からは体裁を変え、記述を簡単にする方法へと改めました。ページ数が第2巻目以降、少なくなっているのはそのためです。

貴重な資料なので、著者であるシンプソンもじっくりと構えて入念な報告書を刊行したかったでしょう。念頭にはたぶん、ガーディナーによる記念碑的な大著、ウィルボー・パピルス(pWilbour)に関する全4巻の存在があったかと思われます。
ガーディナーのこの報告書の第1巻(1941年)は図版を扱い、高さが60cmもある大型本で、第二次世界大戦を挟み、やはり10年以上をかけてようやく完結した刊行物でした。

第1巻目を出して残りの仕事量を勘案した時、シンプソンは考えを改めたようです。
第2巻の序文では「迅速に出版するため、報告の方法を簡略化する」ということを読者に断っています。

William Kelly Simpson,
Papyrus Reisner I:
The Records of a Building Project in the Reign of Sesostris I
(Museum of Fine Arts, Boston, 1963)
142 p., 31 plates

Papyrus Reisner II:
Accounts of the Dockyard Workshop at This in the Reign of Sesostris I
(Boston, 1965)
60 p., 24 plates

Papyrus Reisner III:
The Records of a Building Project in the Early Twelfth Dynasty
(Boston, 1969)
45 p., 21 plates

Papyrus Reisner IV:
Personnel Accounts of the Early Twelfth Dynasty.
With Indices to Papyrus Reisner I-IV and Paleography to Papyrus Reisner IV, Sections F, G.
(Boston, 1986)
47 p., 33 plates

最も厚い第1巻目では、日付、石の大きさ、労働者名などがリストになっているぼろぼろのパピルスを対象としており、神殿の建造記録について触れている第5章が特に興味深い。
しかし分からないことだらけで、71ページのサマリーでぼやいていますけれども、扱われている数字が一体、建物のどこの寸法なのか、まず理解が不能です。

"In brief, the conclusions presented in this initial
presentation of these records are largely negative."

と書かれてあって、「結局、私には何のことだか全然分かりませんでした」という内容を、学術の世界で難しく表現するとこういう言い回しになるという典型。
そうか、"largely negative"という言い方があるのか、と大変勉強になります。

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