2009年1月24日土曜日

Wright 2000-2005


全9巻からなるフォーブスの「古代の技術史」は名著で、改訂を重ねましたが、その和訳がようやく完結に近づいてきた模様です。2003年に上巻が上梓され、今は3冊目の「下巻1」が出たらしい。けれども一冊が600~700ページもあり、大変な訳業。この分野に属する書籍では他にチャールズ・シンガー、他による「技術の歴史」全14巻も和訳がなされています。
フォーブスの本はしかし、出てから相当の年代も経ったということで、版元のブリルが新たなシリーズの刊行を開始しました。つまりは

Robert J. Forbes,
Studies in Ancient Technology, 9 vols.
(Brill, Leiden, 1955-1964)

の改訂版といった位置づけです。
フォーブスは基本的にエジプト・ギリシア・ローマの世界を眺め渡していた人で、全部をひとりで良く書いたと思われるのですが、今回のシリーズ、"Technology and Change in History"では対象となる地域をさらに拡げるとのこと。その建築の領域を担当しているのがG. R. H. ライトで、この人はエジプトのカラブシャ神殿の修理報告書を執筆していることで知られています。著者は今年80歳代の半ば。

George R. H. Wright,
Ancient Building Technology.

Vol. 1: Historical Background.
Technology and Change in History , Vol. 4
(Brill, Leiden, 2000)
xx, 155 p.

Vol. 2: Materials
Part 1, Text
Technology and Change in History, Vol. 7/1
(Brill, Leiden, 2005)
xxxv, 316 p.

Part 2, Illustrations
Technology and Change in History, Vol. 7/2
(Brill, Leiden, 2005)
xxiv, 309 plates.

第1巻は全部で11章から構成されていて、"Non modo aedificantibus sed... omnibus sapientibus"と目次のすぐあとに記されている引用句は、ウィトルウィウスの「建築書」の冒頭に出てくる語。
第1章が「動物の巣」から始められているのが興味深い。最初の図版に鳥の巣の写真を載せている建築史の本なんて、他にはたぶん見当たらないと思います。建物を扱う際の敷居をできるだけ低くしておこうというのがこの著者の建築の見方で、その点が独特であり、G. R. H. ライトにとっては建築の見栄えを整えるという狭い意味での「デザイン」などは、どうでもいいことのように捉えられています。

世界のあちこちの建物を見て回ってきた人だからこそ書ける本で、新石器時代の建物について20ページほど書いていますが、その後の時代のギリシアもローマも、それぞれ同じ20ページずつの記述で終わらせています。
分け隔てなく建物を見るという姿勢が透徹されている本。実際、ピラミッドだろうがパンテオンだろうが特別視はしない、と序文に明言されています。徹底したこの平等主義が興味深い。

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