2009年1月1日木曜日

Gardiner 1935


古代エジプトにおける「夢」と言えば、トトメス4世の「夢の碑文」が有名。ギザの大スフィンクスの前足の間に立てられている大きなステラに、その内容が刻まれています。
当時は王子であったトトメス4世が大スフィンクスの傍らで寝ていた時に、「砂に覆われている自分(=スフィンクス)を掘り出してくれるならば、エジプトの王にしてやろう」というお告げを夢に見たという逸話。
王の継承権を正当に継いでいるかどうかが、当時どのように考えられていたか、それを端的に示す文字資料として知られており、しばしば参照がなされています。

夢占いのパピルスというのも一方で残っていますが、不思議なことにはこの文字資料に強い興味を示す人はあまりいないように思われます。
本書は碩学ガーディナーによる、世界最古の「夢の書(夢の本、あるいは夢占いの本)」として知られているチェスター・ビッティ・パピルスの読解などを含んだもの。ヒエラティックをヒエログリフに書き直し、英訳を添えたものです。原典は中王国時代にまで遡るとのこと。

Alan H. Gardiner,
Hieratic Papyri in the British Museum, Third Series:
Chester Beatty Gift, Vol. I, Text
(The British Museum, London, 1935)
xiii, 142 p.

各文章は短く、いずれも決まり文句の

「夢のなかで・・・・・を見たら、」

という書き出しで始められます。
日本語で、ある程度の訳もなされています。下記の本ではデモティックによって記された後の時代の「夢の書」についても同時に触れられており、概要を知るにはこちらの方が便利かもしれません。夢の解釈は、時代を超えて共通しているという興味深い話が展開されています。
没後も稀代のドイツ文学者として今なお人気の高い、種村季弘の著書です。

M. ポングラチュ/I. ザントナー著、
種村季弘・池田香代子・岡部仁・土合文夫訳、
「夢の王国 -夢解釈の四千年-」
(河出書房新社、1987年)
viii, 408 p.

それぞれの夢に吉凶が記されており、例えば家に関する夢については以下の通り。

「夢のなかでおのれの家を建てるのを見たらーーー凶、不快な言葉が身に迫る。」
「夢のなかでおのれの家が揺れるのを見たらーーー凶、病災あるの前兆。」

当方の専門である建築に関しては、いずれもあまり良いことが望めないようである点が甚だ残念です。
今年は丑年ですので、牡牛の夢をパピルスの文中から探りますと、

「夢のなかでおのれが牡牛を殺すのを見たらーーー吉、敵は殺されるであろう。」
「夢のなかでおのれが牡牛の群を牛舎に入れるのを見たらーーー吉、神は彼のために人を集めてくださるであろう。」

と記されていました。
初夢には是非、牡牛の夢を見ていただくことを願っています。

古代エジプトの夢に関して近年書かれた包括的な論考は

Szpakowska 2003

で、重要です。

0 件のコメント:

コメントを投稿