アメリカ隊は19世紀の終わりからこの地を調査し始め、何冊もの報告書を刊行してきました。この事業はまだ続けられており、その最新号に当たるのが第20巻。調査が100年を迎えたことを記念する厚い一冊。
報告書全巻のリストは、
http://www.ascsa.edu.gr/index.php/publications/browse-by-series/corinth
にて閲覧できます。本書のp. iiにも提示。
日本のどこにこれらの本が所蔵されているかは、かつては見つけるのが非常に難しかったように思うのですが、電子化されてJSTORのCollection VIIに組み入れられ、事情が劇的に変わりました。サイバー大学の学生は自由にアクセスすることができるはずです。
建物に触れている第1巻は6分冊となっており、全部を一挙に読むのは大変ですけど、初期のギリシア神殿について言及されていますし、一度は見ておきたい報告書。
石材に溝を掘って綱を回したらしい珍しい痕跡は、こことイスミアで報告がなされています。
Charles Kaufman Williams and Nancy Bookidis eds.,
Corinth: Results of Excavations Conducted by the American School of Classical Studies at Athens, Volume XX.
Corinth, the Centenary 1896-1996
(The American School of Classical Studies at Athens, Princeton, N.J., 2003)
xxviii, 475 p.
これまでの40冊近くに及ぶ報告書のレジュメが掲載されているような内容。20ページ以上を割き、複数のインデックスも巻末に付されていますが、全巻を網羅するものではありません。
Bietak (Hrsg.) 2001の中で、「コリントスの石切場に関しては原稿が準備されている」という記述が書かれていますけれども、この本の第2章のことを指しており、
Chris L. Hayward,
"Geology of Corinth: The Study of a Basic Resource",
pp. 15-40.
において石切場が詳述されています。
調査の100周年を迎えての記念刊行物ということであれば、クノッソス宮殿について纏められたPanagiotaki 1999がそうだったし、これからもこの種の刊行が増えていくのでは。
報告書が営々と出版されていく例で、エジプト学の中でこれに匹敵するものを探すならば、エレファンティネにおける調査報告ぐらいしか思い当たらず、
Christian Ubertini,
Elephantine XXXIV:
Restitution architecturale à partir des blocs et fragments épars d'époque ptolémaique et romaine.
Archäologische Veröffentlichungen des Deutschen Archäologischen Instituts, Abteilung Kairo, Band 120
(Philipp von Zabern, Mainz am Rhein, 2005)
87 p., 38 plates.
が近年、出ています。