要領よくローマ建築の建造過程が纏められた本で、ペーパーバックも出ています。
Rabun M. Taylor,
Roman Builders:
A Study in Architectural Process
(Cambridge University Press, Cambridge, 2003)
xvi, 303 p.
Contents:
List of Illustration (p. ix)
Acknowledgments (p. xv)
Introduction (p. 1)
1 Planning and Design (p. 21)
2 Laying the Groundwork (p. 59)
3 Walls, Piers, and Columns (p. 92)
4 Complex Armatures (p. 133)
5 Roofing and Vaulting (p. 174)
6 Decoration and Finishing (p. 212)
Notes (p. 257)
Glossary (p. 275)
References (p. 281)
Index (p. 293)
建築にまつわる雑多な作業を、だいたい6つに収斂させ、解説。
150枚の図版を収め、代表的な、見逃せないローマ時代の建築を追っている点が特徴。パンテオンの屋根がどうなっているかはヴィオレ=ル=デュクがすでに19世紀の終わりに考察していますが、その構築過程を改めて考え、新たに図を描き起こしていたりします。カラカラ帝の公共浴場、バールベックの巨大な神殿やコロセウムなどを中心とした図版も豊富。
これらの図版の扱いがいささか小さくなってしまっているのが難点で、たとえばポン・デュ・ガールの水道橋の石の組積で「右」、「左」、「中央」の略号と数字が刻まれているさま(p. 181, Fig. 100)は、掲載された写真でははっきりと視認できません。
J.-P. アダムの本、"Roman Building"(Adam 2007, 5e éd.)から、いくらか図が引用されていますし、クレンカーの図も同様に引かれています(Krencker und Zschietzschmann 1938などを参照)。18世紀の版画家、ピラネージの図解までもある。
建築技術の本というのは子供向けの絵本ととても似たところがあり、寿命を延ばそうと思ったら絵の描き方と枚数に気をつかわなければならないということを再度、思わせます。
序文で面白いと思わせる下りがあり、
"To him I owe the awakenings of my interest in structural design; and while my interest is that of an engaged amateur, he gave me reason to believe, when others would not, that the two cultures of science and humanities can be assimilated in interesting and refreshing ways." (p. xvi)
と記されています。ここには著者の飾らない気持ちと、広く世界を見渡そうとする意欲との両方がうまくあらわされています。